旧制八尾中学・府立八尾高等学校同窓会東京支部

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こんなデジカメをつくっています

高34期 福井良氏
 (株)リコー パーソナルマルチメディアカンパニー企画室勤務


* 転勤で横浜 *


みなさんデジタルカメラをお持ちですよね。
私は、今、リコーでデジタルカメラの商品企画の仕事をしています。
「えっ!?」と驚かれた方も沢山いると思います。「リコーってコピーの会社でしょ?」「リコーのデジタルカメラ何か見たことないよ!」と言う話は、本当によく聞きます。

実際、テレビでCMを殆ど流していませんし、お店によってはリコーのデジカメを置いていないところもあります。
でも、結構有名な方やモデルの人なんかも使ってくれていますので、一度ググってみてください。

私は、横浜にきて丁度10年になります。元々は、大阪で半導体の設計に携わっていました。
その頃は、仕事も任されていて、自分の将来像も大体見えてきていたのですが、どうも仕事に対しての満足感が得られずにいました。それは、半導体と言う部品ではなく、お客様が実際に使う製品の開発に関わってみたいと言う思いが強くなっていたからです。

丁度その頃、社内で新しいコンシューマ商品の企画担当者を募集していることを知りました。
40歳を目前にして今までのキャリアを捨てて、全く経験のない仕事が出来るのか?
新しい勤務地は横浜・・・家族も含めて生活の拠点を変えてしまっていいのか?
これらの考えが頭の中を駆け巡り、応募するべきかどうか、かなり迷いました。

ずいぶん悩んだ揚げ句、きっと応募しても、年齢や経験、転勤が必要になること等から、合格することはないだろうと思い、気持ちの整理をつけるためにも思い切って応募することに決めました。
もし応募しなければ、将来「あの時に応募しておけば良かった」と後悔すると思ったからです。
しかし、結果は、思いの他の「合格」。
喜んで良いのか、本当に横浜に行ってしまっていいのか、複雑な気持ちだったことを覚えています。

こうして、横浜での新しい生活が始まったのですが、提案した企画は中々商品化されず、所属していた事業がクローズになるなど、紆余曲折があり、初めて自分が担当した商品が店頭に並んだのは、デジタルカメラ部門に移動した2005年のことでした。

自分が作ったカメラを町で使っている人を見つけた時は、長年の苦労がやっと実を結んだように思えて、本当に嬉しかったです。
思わず近寄って握手を求めようと思いましたが、さすがにそれは止めました。(笑)


* 一眼レフ派とコンパクト派 *

デジタルカメラは、レンズが交換できるデジタル一眼レフカメラと、レンズ一体型の コンパクトデジタルカメラの2種類に大きく分類することができます。
他には、イメージセンサー(フィルムカメラ時代のフィルムにあたる部分)の大きさによる違いがあります。
一眼レフは、大きなサイズのイメージセンサーを搭載しています。イメージセンサーのサイズが大きいので、多くの光を集めることが可能となり、夜や暗い場所等、条件の悪い状況でもキレイな写真を撮ることができるのです。
また、ピントが合う場所が狭いので、背景がキレイにぼけて、ピントの合った被写体を 浮き上がらせるような写真を撮ることも出来ます。
しかし、その反面、本体やレンズが 大きくなってしまうので、いつも持ち歩くのは少し大変です。


(大きなイメージセンサーで撮影した写真)

これにたいして、コンパクトデジタルカメラは、小さなサイズのイメージセンサーを使っていてポケットに入る大きさなので、いつでも持ち歩くことが出来ます。
ピントも広い範囲に合うので、日ごろの何げない風景を撮るのに適しています。


(小さなイメージセンサーで撮影した写真)

つまり、イメージセンサーの大きさが変わることで撮影のスタイルや撮れる写真が変わってくるのです。


* ユニークな着せ替え式デジカメ *

今、私が担当しているのは、ユニット交換式カメラシステムと言うものです。
この商品は、今までのデジタルカメラとはちょっと違った特徴を持っています。
「レンズとイメージセンサーを一体化させたユニット」を交換する事ができるのです。

ユニット交換式カメラシステム GXR

ユニット交換式カメラは、日ごろ持ち歩く時は小型センサーのユニット、被写体を決めてしっかり狙って撮影する場合は大型センサーのユニット、と、目的に合わせて使い分けることが出来ます。



* 苦節10年で実った夢 *

開発に当って、交換する時の装着感にはこだわりました。
ユニットを本体に取り付ける時に「カチッ」とはまること。
まるで、高級自動車のドアを閉めるようにスーと引き込まれるような感触を目指したのですが、これが大変でした。

私たち商品企画の人間は、「グシュ!という感じは嫌。」とか、「壁があって、強く押すとその壁をこえてピタッとはまる感じ。」とか言うのですが、これらは全て言語情報です。
これでは製品は作れないのです。
製品を設計するためには、これらの言語情報を数字化する必要があります。
目標を達成するために、何度も試作を実施し官能評価を繰り返しました。
そうして、少しずつ定性的な言語情報を、定量的な数値情報に置き換えていくことで、狙いの装着感を得ることが出来ました。

10年前、大阪から横浜に出てくる時には、職場の同僚たちに「新聞や雑誌で、大きく取り上げられる物を必ず世に送り出すから。」と言ってきました。
その言葉をようやく実現できたのが、今回の製品です。
そして、この製品の開発を指揮して頂いたプロジェクトリーダーの北郷隆さんが、八尾高校23期の大先輩であったことにも、不思議な縁を感じています。

銀座4丁目の交差点に、”リングキューブ”と言うフォトサロンがあります。
そこでは、「リコー製デジタルカメラの無料1日貸し出し」をおこなっています。
近くに行かれたときは、是非お立ち寄りいただき、私たちが開発したカメラを試してみてください。
きっと、写真を撮ることが大好きになると思います。

*銀座リコーフォトギャラリー "リングキューブ"



撮影:小澤太一氏(写真家)
* 小澤氏による福井氏の掲載記事はこちら→http://ameblo.jp/kozawataichi/day-20110302.html








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